夜中のコインランドリー
桜の花も、気がついてみると、もう緑の葉桜に変わっていました。ついこの間、卒業式と思ったら、もう入学式です。今までは、受験なんか関係ないと思っていた生徒たちも、もう今年度受験生です。すべてはあっという間の出来事です。” Strum und Drang (シュトルム ウント ドランク) “まさに疾風怒濤の勢いです。皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
さて、先月はキャベツパニックに襲われたわけですが、時がたつとあのパニックは懐かしい楽しいネタになっており、また今月も何か楽しいネタがないかなーと思っている矢先のことでした。
コインランドリー
4月は雨が意外と多い。気がつくと第二教室(別名貴賓室)附属洗濯機には溢れんばかりの洗濯物。ついに着るものもなく呆然とするのみ。そこで雨の中、意を決して洗濯物をかご2つに入れ24時間営業のコインランドリーに向かう。いいコインランドリーがあると言う情報を得てわざわざ雨の中、小平まで車を走らせたわけです。しかし、お値段高いんですよ…。洗濯700円。乾燥300円。合計1000円です。あーあ出費がかさむ…。怠惰な生活は経済を圧迫します。
爺さん
深夜0時にかかわらず、先客がおりまして、それがまた爺さん。妙な爺さんで、よく見てみると洗濯物もない様子。なぜか大きい懐中電灯を椅子の前のテーブルにおいて座っているんです。まあ、気にせずこちらは洗濯開始。久々に星新一のショートショートを読み始めました。
10分ほどして、ふと爺さんのことが気になったわけです。私が店に入ってきてから10分、まったく動く気配がない。まったく音も聞こえない。気になり始めると、どんどん気になるわけで、「いったい爺さん何してるのか」「何で動かないのか」「動く音もしない」などとどんどん頭の中が爺さん一色になるわけです。星新一のショートショートのストーリーですらまったく頭に入らず、頭の中が爺さんで一杯につまったとき、ついに恐ろしい妄想が始まるわけでしてはい。
恐ろしい妄想
「爺さん、もしかして呼吸音しない…」「この爺さんはもしかすると息をしていないのでは」「ということは死んでいるのではないだろうか」「これはもう爺さんではなく、爺さんの死体なのではないだろうか」
ここまで来ると、まったく本など読んでる場合じゃなくなるわけでして、私も大学で法医学を学んだ一人として、緊張感を持ってじーっと爺さんを観察したわけです。結論は「やっぱりまったく動かない」そして、今後の恐ろしい展開が頭の中を駆け巡るのです。
妄想劇場開始
コインランドリー前には赤く光る4・5台のパトカー、救急車もいる。
「あの太った男がおじいさんを殺したみたいよ」「怖いわねー、何が起こるかわからないわねー」などという近所のおばさんたちのささやきが聞こえる。
「初動捜査班」と腕章をした私服の警官たちに囲まれ、事情聴取を受ける私。もちろんマスコミ各社も集まりレポーターがテレビカメラを前に
「本日午前0時頃、東京都小平市の24時間営業のコインランドリー内で男性の死体が発見されました。警察は第一発見者の男性から詳しく事情を聞いておりますが、この男性に挙動不審な点が多いことから、さらに詳しく事情を聞く模様です」
などと言っているわけです。
何でパジャマのまんま来てしまったんだろう…。などと思っている私を無視して警察官たちから矢のような質問がとんでくる。
「あなたの住所氏名年齢は」……東京都八王子市~の中原太郎助左衛門、歳ははたち。
「あなたはなぜここにいるのですか」……コインランドリーなんだから洗濯に決まってるでしょ。
「このおじいさんとはお知り合いですか」…いいえ初めてここで会いました。
「だいたいあなたは何でこんな時間に洗濯なんかしに来たんだ」……だって、着るものがなくなったんだから仕方ないじゃないですか。
「君は八王子に住んでいるのに、なんだってこんな遠くの小平まで洗濯しに来たんだ」……ここが評判の24時間コインランドリーだって聞いたんだから。
「いったい誰にそんな評判聞いたんだ」……ですから、知り合いに聞いたんですよ。
「その知り合いは小平の人なのか」……いえ、武蔵野市の人なんですが…
「どうもおかしいなー、詳しく事情を聞きたいから署まで来てもらおうか」…
と、パトカーに無理矢理押し込まれ警察署に連行される私…。
つんつん
まあ、そんな妄想が頭の中を渦巻くわけですよ。そんなことを考えても「爺さん、もし死んでいたら大変だー」とか思い、意を決して爺さんのそばにより、肩を「つんつん」してみたわけです。
「ギャー!!」
と今まで死後硬直でもおきたかのように固まっていた爺さんが、ゾンビのごとく突然がばっと立ち上がって雑巾を引き裂くような声で叫んだわけですよ。いやいやゾンビのごとくではなく、まさにゾンビです。普通の爺さんが突然立ち上がって叫ぶか!!!
油断しました。そりゃ腰抜かしますよ。ゾンビ爺さんが突然息を吹き返し人間を襲ってやるぞーみたいな勢いで叫んできやがって(下品で失礼)。驚いたのなんのって、こっちもぶったまげて「ぎゃー」と叫び、後ろひっくり返るは、後頭部をテーブルにぶつけるはで大パニックですよ。完全に寿命5年は縮んだなー。まったく…
というわけで先月に続き世の中、何があるか分かりません。BRAIN の生徒、保護者の皆様方も常に危険、危機に対して準備していきましょう。あらゆることは、まるで「キャベツ」や「ゾンビ爺さん」の一撃ように一瞬で決まってしまうんです。だからこそ、しっかり本気で日々準備しておきましょう。
ちなみに、その後ゾンビ爺さんは何事もなかったかのように眠っていました。めでたしめでたし。
BRAIN TRUST INFORMATION No.111