前を見て進もう ~カラヤン論
いきなり夏日かと思えばじとじと雨。嫌な天気が続く今日この頃皆様いかがお過ごしでしょうか。
さて、先月の25日に高3の最後の受験の結果が出てBRAIN の1年は終わりました。新学期も始まり、いよいよこれからが本格的な1年のスタートになります。
BRAIN もこの4月1日に設立10周年を迎えました。長いようで短い10年間でした。この10年を振り返ってみると…、やめておきましょう。過去を振り返っても過去は変わりません。「ああすればよかった…」「こうすればよかった…」やめましょう。前を見て「今」をしっかりと踏みしめていきましょう。
革命児誕生する
ちょうど今から100年前の4月5日、モーツァルトの聖地ザルツブルグに一人の天才革命児が生まれました。その名はヘルベルト・フォン・カラヤン。「帝王」とまで言われた天才指揮者です。
20代の頃、ベルリン国立歌劇場にワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」でデビューし、強烈に口の悪い批評家たちからも『奇跡のカラヤン』と絶賛され、あのヒトラーからも「君は神の道具だ」と絶賛される。
戦後はベルリン・フィルの大指揮者フルトヴェングラーの対抗馬として実力を積み重ね、フルトヴェングラー逝去後1955年にこの世界最高のオーケストラ、ベルリン・フィルの首席指揮者であり芸術総監督に就任、1989年4月25日に辞任するまで34年もの長きに渡りヨーロッパ音楽界に君臨した天才でした。
辞任した3ヵ月後1989年7月16日彼は亡くなります。
かっこよかったな~。
今は「のだめカンタービレ」とかで有名になりましたが、カラヤンが振るベートーヴェンの交響曲第7番の演奏会は、どこで聴いたか忘れてしまいましたが、とにかくびっくりしたな~。手を振り下ろした地点で音の打点(出だし)を示す、外見的にも非常に格調高いカラヤンの指揮でしたが、あのときは本当にびっくりしたーーー。
カラヤンも気合が相当入っていたようで、いつものように最初の強烈なフォルテッシモを力をこめて振り下ろすカラヤン。ところがベルリン・フィルから音が出ない!!! 1秒から2秒くらいは無音時間があったんじゃないだろうかというくらいの完全な無音。客席の息遣いもまったくない。はっと思っているとその直後、超重量感のある低音をベースとした強烈なフォルテッシモが…。豪快なイ長調の和音が響き渡るではなく「爆発」したんです。
カラヤンの音楽的特徴
滑らかに演奏するレガートの徹底した使用、ヴァイオリンやチェロの高い音を鋭く演奏させ、ピッチ(ドレミファソラシドのラの音)を標準の440Hzより高い445Hzにすることによって輝かしさを実現(これが我々管楽器奏者にはきついんだな~)、さらには腕っこきの世界最高のコンサート・マスターを3人置き(日本人の安永徹がまだやっていると思うけど)、コントラバスを通常の8人から12人にし、オーケストラのフォルテッシモからピアニッシモのダイナミズムと、室内楽的精密さという相反する2つの要素の両立を実現していく。ベルリン・フィルだから出来たことですが…。
カラヤンの要求
カラヤンは、どんなに金管のトップ奏者がフォルテッシモでガンガン吹いていても、和声をつける内声部の金管やヴァイオリンを始めとする弦パートがしっかり聞こえなければならないことや、低音パートがほんの少し先に音を出すことなどを要求。これらの要求が、ドイツ的ともいえる重量感のある低音を基礎とするピラミッド型のどっしりとした造形、そして色彩感溢れる演奏を可能にした。と、ものの本には書いてあります。
1980年代までのこれまた超天才、ベルリン・フィル首席コントラバス奏者ライナー・ツェッペリッツは当時
「オーケストラがこれほどまでの音楽的充実感、正確性を追求できたことは今だかつてなかった。われわれは世界中のどのオーケストラにも優る、重厚で緻密なアンサンブルを手に入れたのだ」
との自信あふれる発言を残しています。
どんな練習方法か?
カラヤンの練習を見たことがある人からの話なんですが、さぞカラヤンだから奏者にガンガン要求していく恐ろしい練習かなと思いきや、全然違い、高校のブラスバンド並みの練習とのこと。
ベートーヴェンの交響曲第2番で、ファゴットとチェロが絡んで進んでいく部分があり、その部分がどうも気に入らないらしく何回かやっては止め、やっては止めを繰り返していたカラヤンは、突然チェロの座っている場所にファゴットを移動させたんです…。お互いよく聴きあいなさいということです。
その他、ちゃんと音の出だしが揃っているかとか、テンポのずれを指摘したり、各パートごとにやらせたり、そんなことばっかりのようです。ソロには一切何も言いません。
驚いたなー。ベルリン・フィルとの信頼関係がこの練習を築き上げたと思います。
前を見て進もう
1980年カラヤンがベルリン・フィルに就任して25周年の記念コンサートのことです。ドイツの大統領、首相、ベルリン市長臨席の中、カラヤンの挨拶です。
「私は過去は振り返らない。私は常に船の舳先に立って前を見据えて進んでいた。それはこれからも変わることはないだろう。」
かっこいい!! お歴々を前にこんな言葉を言っても様になるのがやっぱりカラヤンです。私も言ってみたい。だから最初に言ったでしょう(笑)。
BRAIN の生徒・保護者の皆さん!! 前を見て進んでいきましょう。いろいろと困難はあるものです。しかし、困難はそれを乗り越えるために神様が与えてくれたものです。勉強だけではありません。前に進むことが出来る実力、人間力をガンガンつけて、どんどん前に進んでいきましょう。
BRAIN TRUST INFORMATION No.88